11:00〜 白谷雲水峡
昨日の縄文杉日帰り登山がこたえて、やはり朝から筋肉痛。
しかも2日連続の寝不足で、アタマも体も朦朧としておる…
一番楽しみにしていたもののけの森、白谷雲水峡なのに、最悪のコンディションで向かうことになりそうだ。
しかし天気の方はさわやかな青空で、絶好のコンディション!
昨日の雨の影響で、森も潤ってさぞかし美しくなっていることだろう。
いかに体が辛かろうが、行くしかないでしょう、これは。
縄文杉登山よりも行程はずっと楽はなずだしね。
朝一番のバスに乗るのは無理と判断し、朝食後すぐ部屋に戻り、10時まで寝る。寝不足をちょっとでも解消するのだ。
疲れているとバス酔いしがちな私なので、バスはあきらめてタクシーで行くことにした。
嗚呼体力がないってのは、金がかかるものだのぉ…
のろのろと準備して11時にタクシーを呼び、11時半頃に登山口の白谷広場に着いた。
なーんだ、あんまり人いないじゃん。…って、みんなもうとっくに出発しているからでしょ。…と自己ツッコミを入れる。
今日は太鼓岩まで行って、16:10の最終バスで帰るつもりなのに、間に合うのかしらん。 焦りつつ出発…
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沢沿いに木道の階段をあがっていくと、
白たえの滝、飛竜おとし
などの沢ポイントが左手にみえたが、 ここはさらっと早足で通り過ぎる。
帰りに時間があったら、じっくり見ればいいや。
森の中でなによりも目を奪われるのは、苔たち。
が昨日の雨水を含んで、キラキラしている。
思わず足をめ、デジカメに収めまくる。
苔の緑を映して、薄エメラルド色に光る水滴は、どんな宝石よりも美しい!
こんなキレイなものが見れるなんて、来てよかった〜!
しばしの間、じ〜〜っと苔に魅入る。
※写真がピンボケで、この感動を伝えきれないのが残念。
…と、こんなことをしていたら時間がいくらあっても足りないので、名残を惜しみつつ先を急ぐ。
台風の影響で、弥生杉へのコースは封鎖されていた。
まぁ、また今度来た時に見ればいいや。すでにリピーターになる心積もり。
時間がないから早足で進むが、美しい景色は絶対見逃したくない!という欲張りな気持ちで、周囲に神経を張り巡らす。
きっと今の私の目つき、悪いんだろうなー。
いよいよ森深く分け入ってみると…
白谷雲水峡の森の中は、今まで私が知っているどの森とも違っていた。
これでも高校時代は山岳部に所属しており、東北の2000m級の山々を30回くらい登って、あらゆる森を見てきているつもりになっていたが、ここは他の森たちと違って、なにか神聖な感じすらある。
夜になったらここは、人間が足を踏み入れてはならない雰囲気をかもし出にちがいない。
一人でこの森で夜を明かすなんて、想像するだに恐ろしい…
二代大杉・くぐり杉のあたりで、ガイドツアーの一行をみかける。
よかった。ようやく出発の遅れを取り戻せたらしい。
しかしこの人たちは、おそらく太鼓岩まではいくツアーではないのだろう。 まだまだ急がなければ…
ガイドさん達はこの杉たち成り立ちを説明しているようだったが、昨日の縄文杉ツアーでガイドさんが説明してくれたのと同じような内容だったので、あっさり素通り。
そこからしばらく進むと、信じられない光景が…
こ、この光景は何?オチューが出たの??
※注:オチューとは、「ファイナルファンタジー」というゲームに出てくる触手を持った化物
いくつもの世代更新の枝を生やした倒木に、びっしりと苔がはりつき、それが木漏れ日を浴びて鮮やかな黄緑色に光っているんです。
なんていうか、よくできた映画のセットを見ているよう。
(↑思わずこういう想像してしまうところが、現代人の悲しさ)
私はすっかり魅入られて、その倒木にふらふらと近づいてみた。
こんなカワイイ色の苔、見たこと無いよぉ〜。
近づいてまじまじと観察すると、倒木の割れ目に、かわいらしい双葉が2つ、仲良く目を出している。
苔にそっと触ってみると、水を含んですっごいフカフカ!
苔っていえば、岩に薄〜く張り付くように生えているようなイメージしかなかったけど、全体的に屋久島の苔はかーなーり分厚い!
特にこの黄緑の苔は、厚さ7cmくらいはありそうだ。
時間を忘れて魅入ってると、後ろの道から親子連れの4人がワイワイ近づいてきた。
名残は惜しいが、場所を譲るとしよう。
白谷では屋久鹿には、3匹会った。
近づいてもカメラを向けても、逃げるでもなく、ものめずらしげに近づくでもなく、鹿たちはただマイペースに、そこにいる。
大きな杉の横を、早足で通り過ぎようとしていたとき、その杉の陰にいた鹿と鉢合わせしたときは面白かった!
鹿がびっくりして私を見、私もびっくりして鹿を見。
そうしてしばらくお互いに、至近距離で見つめあってしまった(笑)
先に目をそらしたのは鹿で、そこから逃げることもなく、再び何事もなかったかのように草を食み続けた。
なんだか鹿に人間扱い(?)されなかったことで、自分が鹿と同一化してしまったような不思議な感覚を覚えた。
そして人間も鹿も、同じ動物なんだよなぁ〜と当たり前のことを実感。
しばらく歩くと森が開け、明るい沢に出た。
2組のガイドツアー、が、沢の上の大岩に座ってお弁当を食べている。
時計をみると、12時40分。 私もここで、 昼食をとるとするか。
すると、上流の大岩のほうで、私の名前を呼ぶ声がする…そっちを見ると、夕べの海ガメツアーで一緒にカメを見た女性だった。
ガイドさんも、海ガメのときのガイドさんと同じ女性。
彼女は夕べ、「明日の白谷雲水峡にはガイドツアー参加する」と言っていたので、どこかで会うかもな〜とは思っていた。
一旦開いたお弁当をたたんで、そっちの方に移動する。
ご飯は大勢で食べたほうがおいしいもんね。
そこから先のもののけ姫の森までは、ガイドツアーの後ろにくっついて(飛び入り参加)進む。
一段と森が深く、緑が濃くなってきたと思ったら、目の前に目的の場所が…
とにかく、緑緑緑… 上下左右前後ろ、まったりと緑に塗られた世界。うはー。
森は静かで、小鳥の声すら聞こえない。
コダマいないかなぁ… いかにもあのへんの幹に、座ってそうなんだけどな(笑)
しっかし、こんなところに一人置いていかれたら、いい大人でも泣きそうだぞ。
ガイドツアーは、もののけ姫の森で終点。
彼女らと別れ、一人で太鼓岩へ向かった。
森から元気をもらったのか、ずいぶん前から寝不足も筋肉痛も気にならなくなっていた。
もののけ姫の森で引き返す人が多いけど、ここから太鼓岩までの道程にも、すごい景色が広がっている。
太鼓岩への道は急に人も少なくなる。
もののけ姫の森の横をすり抜けていくので、森の全体像がわかり、神秘的な雰囲気が堪能できた。
これから白谷雲水峡へ行く人は、太鼓岩まで行かなくても、もののけ姫の森より100mくらい先まで足を運んでみるといいかも。
途中、「太鼓岩まで20分」という標識を見る。
あと一息!
ここからイキナリ、急な山道に。
道も狭く、歩きにくい。
しかも道しるべとなるピンクのリボンが、木々が多くて見つけにくい。おかげで 何度か道に迷ってしまった。
そのうち尾根にたどり着き、尾根伝いに縦走してしばらくすると、太鼓岩に着いた。
いい風だ〜〜、いい眺めだ〜〜。
パラグライダーでここから飛び降りてみたら、きっとかなり気持ちいいだろう。
岩のぎりぎり前まで出て、座って足を投げ出す。スリル満点。
そうしてしばらくねっころがっていると、1カップルがやってきた。
せっかくだから記念に、男性の方にお願いして写真をとってもらう。
観光客っぽかったので、どこに観光しましたか?などと少々世間話をする。
明日は帰るので、短時間で楽しめるオススメのレジャーありません?とたずねてみたら、シーカヤックがいいと勧めてくれた。
う〜ん、面白そうだけど、なんだか準備がめんどくさそうだ。帰る日にバタバタするのもなぁ。
彼らとは結構長話してしまって、気が付くと時間は15時20分。
え! もうそんな時間??バスが出るまで、50分しかないじゃない!
じゃー先にいきますね!と慌てて別れを告げ、ヤマンバのように山を駆け下りる。
下山時に捻挫することが多いので、急ぎながらも慎重に降りた。平坦な道では走った。
走って走って、もののけ姫の森まで戻ってきた。
日が傾いたせいか、さっきよりも緑が深くなっていて、より一層、もののけじみた風情をかもし出している…
人は誰もいない。私と、森だけだ。
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もし、ここで立ち止まったら、深い深いこの森に取り込まれて、苔の一部にされてしまうんじゃないか…
そんな本能的な恐怖を感じ、背筋に冷たいものが走った。
もちろんそれはあり得ないことだけど、 この森には、そう信じさせるに足る圧倒的な存在感があるんだ。
その存在感は、写真では決して表現しきれない。
森に入った者だけが、実感できるものだろう。
森に目を向けす、立ち止まらずに走り抜けた。
分岐から楠川歩道に入ったあたりで、ちょっとペースを緩める。ようやく、人の姿もみえた。
ここまでくれば、 バスにも間に合うだろう。
この道も、なかなかどうして、楽しめそうな森だった。ゆっくり見る時間がないのが残念。
さつき吊橋を渡り、登の時に通った道に合流。
そこから白谷小屋へは、あっさりついてしまった。しかも、バスのくる20分前にはついた。
ってことは私、太鼓岩からここまで、 30分で降りてきたってこと??
時計見まちがえたかなぁ?
小屋の近くの沢で、疲労しきった足をひたす。
真夏なのに水はとても冷たくて、5秒とつけていられなかった。
帰りの最終バスは、夏休みシーズンだし、さぞかし混んでいるのでは…と思っていたが、せいぜい7.8人の若者が乗っているだけだった。
みたところ皆、一人できた人たちらしい。
出発してすぐにバスの運転手さんが、
「ここに水場があるんだけど、のど渇いてタマランって人いない?」
と運転しつつ呼びかけてきた。
せっかくの呼びかけだけど、 疲れてるし、バスを降りてまで水汲みに行くのはしんどいなぁ…
周りの若者たちも同じように思ってるんだろう、リアクション薄ーい。
さらに運転手さんは言った。
「この水場は『不老長寿の水』と言われてて、けっこう有名なんだけどな。飲みたい人いない?」
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即座に、「飲みたいです!」とあちこちから声があがった。これには笑えた。
それを先に言ってください、運転手さん(笑)
運転手さんは道すがら、いろいろと屋久島の楽しい話をしてくれた。
中でも傑作だったのが、
屋久島には、「ヒッチハイク猿」というのがいる、という話。
その名の通りヒッチハイクをする猿がいる、らしい。。
ヒッチハイクの仕方は、道の真ん中に出て車を止め、ボンネットの上に飛び乗り、降りたいところで勝手に降りていく、と。
車を発信させないでいると、窓越しから威嚇されるらしい。
ボンネットから落ちないように、ワイパーをつかんで乗っているらしい。
そんな猿、ぜひこの目でみてみたいものだー。
かくして最終バスに乗り遅れることなく、白谷雲水峡を後にした。
また絶対、こようと思った。今度は霧のあるときがいいな。
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